洋ラン高校

初めに
洋ランの栽培に役立つことの幾つかは、高校で習ったことのあるものです。高校は選択科目があるので、習っていないこともあります。

1.地理−気候区分
(1)熱帯・亜熱帯
洋ランは主に熱帯産とか、亜熱帯産とか言われています。昔はこのような分け方しか習いませんでした。緯度で約23.5度は、太陽の及ぶ限界で回帰線と呼ばれ、それより内側が熱帯です。
日本では東京都小笠原村の火山列島・南鳥島・沖ノ鳥島、沖縄県の八重山列島・多良間島・沖大東島がこれに該当するそうです。
「亜熱帯」には決まった定義はないようで、一般には熱帯の北と南にある北回帰線と南回帰線(それぞれ北緯・南緯23.5度)付近の緯度が20度から30度あたりの地域を漠然と指すことが多い。また、温帯に属する地域の中で最寒月の最低気温の平均 (平均気温ではない)が摂氏0度以下には下がらない地域であるとか、温帯であって年平均気温が18度以上である地域であるなどの定義がされることもある。
この緯度の地域は、大陸の東岸においてはモンスーンの影響を受けるため非常に湿潤となり、熱帯モンスーン気候や温暖湿潤気候など熱帯や温帯に属する気候となる。対して、西岸においてはモンスーンの影響を受けないため、亜熱帯高圧帯の影響下でほとんど雨が降らず、乾燥帯となるのである。
日本国内では、東京都小笠原村の聟島列島・父島列島・母島列島・西之島、鹿児島県の奄美諸島、沖縄県の沖縄諸島(沖大東島を除く)・宮古列島(多良間島を除く)・尖閣諸島が亜熱帯に属する。
(ウィキペディア)
(2)ケッペンの気候区分
洋ランの入門書にはほとんど見かけませんが、近年は上のような分け方ではなく「ケッペンの気候区分」というのが主流になっています。ドイツのケッペンという学者が「植生分布」に注目して1923年に提案したもので、洋ラン栽培のように植物の自生状況を考えるには特に適していると言えるでしょう。
緯度では熱帯でも高山では気候は異なり、日本では気候を四季・言い換えれば温度で考えますが、世界の大半は、温度による四季よりは、雨季と乾季で気候が決まっています。ケッペンの気候区分は乾燥帯に重点を置いており、その点でも植物の産地を考えるのに適しています。は舎出版、1994
・気温と降水量の2変数から単純な計算で気候区分を決定できることに特徴がある。
・分類基準が明確で簡便。 
・植生、風土の特徴を反映している。 
・立地条件など気候の成因と相関している。 
など、扱い易い上に有用な分類法であり、現在でも気候・産業・文化・農業を論ずる上で欠かすことができない。一方で
・植生にのみ注目しているため、人間生活などの感覚になじまない部分がある。 
・アジアやアフリカの気候に関しては的確に分類されているとはいえない。 
といった批判もあるそうですが、ここでの目的からすると余り問題にはならないでしょう。
判定には、まず一般的な樹木が生育するのに必要な最低限の降水量があるかどうかを見る必要がある。この基準を乾燥限界といい、以下の計算式から求められる。計算式の違いは季節ごとの水分の蒸発量を考慮したもので、夏季は水分がすぐ蒸発するため、乾燥限界を大きくして調整をはかっている。


気候型と植生
上の記号の組み合わせにより、次のような区分ができる。

A(熱帯) 
Af(熱帯雨林気候) 
Am(熱帯モンスーン気候) 
Aw(サバナ気候) - 普通はAsもこのサバナ気候に含める。 
As(熱帯夏季少雨気候) - この気候は極めて珍しく、ハワイ州の一部等ごく限られた地域のみに存在する。 
B(乾燥帯) 
BWh,BWk(砂漠気候) 
BSh,BSk(ステップ気候) 
C(温帯) 
Cfa(温暖湿潤気候) 
Cfb,Cfc(西岸海洋性気候) 
Cwa,Cwb,Cwc(温暖冬季少雨気候) 
Csa,Csb,Csc(地中海性気候) 
D(冷帯) 
Dfa,Dfb,Dfc,Dfd(冷帯湿潤気候) 
Dwa,Dwb,Dwc,Dwd(冷帯冬季少雨気候) 
Dsa,Dsb,Dsc,Dsd(高地地中海性気候) - ごく限られた地域のみに存在する。 
※Dsdは定義上は存在するが地表上に該当箇所が無い。 
E(寒帯) 
ET(ツンドラ気候) 
EF(氷雪気候) 
G(山地気候) 
H(高山気候) 
トレワーサによるD気候分類 
Da,Db(湿潤大陸性気候|大陸性混合林気候=Dfa,Dfb,Dwa,Dwb,Dsa,Dsb) 
Dc,Dd(亜寒帯気候|針葉樹林気候=Dfc,Dfd,Dwc,Dwd,Dsc,Dsd) 

気候図
世界を気候区分ごとに色分けしたものが良く使われています。下の例は
Koppen-Geiger climate classification (1951-2000) 
東アングリア大学の気候調査部門 (CRU) とドイツ気象局の世界降水気候センター (GPCC) がまとめた1951年から2000年の気象データを基に、
ケッペンおよびガイガーの気候区分にしたがって作られた気候



参考:気候帯の分け方は専門的には次のようになっています。
降水パターンの区別
w(冬季乾燥/夏雨) : 最多雨月が夏にあり、10×最少雨月降水量<最多月雨降水量 
s(夏季乾燥/冬雨) : 最多雨月が冬にあり、3×最少雨月降水量<最多月雨降水量 かつ 最少雨月降水量が30mm未満 
f(年中湿潤/年平均降雨) : 上記のwとsのどちらでもない 

乾燥限界 r (mm/樹木生育に必要な最低降水量)の計算
年間平均気温を t (℃)とする。気温は摂氏、乾燥限界(降水量)はmmを用いる。cmで求める場合はこの式を10で割ればよい。

r=20(t+x) 
上記の降水パターンの区別でfの場合はx=7、wの場合はx=14、sの場合はx=0となる。

年平均降水量 (mm) が r 以上の場合は湿潤気候 (A,C,D) に分類、r 未満の場合は乾燥気候 (B) に分類される。
また、乾燥気候 (B) と寒帯気候 (E) は、それぞれ乾燥限界と最暖月平均気温から簡単に判定できる。


乾燥気候 (B) の区別
B(乾燥帯) : 年平均降水量がr未満。 
BW(砂漠気候) : 年平均降水量が0.5r未満。 
BS(ステップ気候) : 年平均降水量が0.5r以上r未満。 
乾燥限界rは上記の計算式で求められる。WはWuste(砂漠)、SはSteppe(ステップ)。


乾燥帯 (B) の細分化
B(乾燥帯)に関しては年平均気温によってさらに細分化される。

h : 年平均気温が18℃以上。 
k : 年平均気温が18℃未満。 
hはheis(暑い)、kはkalt(寒い)。


寒帯気候 (E) の区別
E(寒帯) : 最暖月平均気温が10℃未満(樹木が育たない)。 
ET(ツンドラ気候) : 最暖月平均気温が0℃以上10℃未満(夏の間だけコケなどの地衣類が生育する)。 
EF(氷雪気候) : 最暖月平均気温が0℃未満(植物の生育はない)。 
TはTundre(ツンドラ)、FはFroste(氷点下)。


湿潤気候 (A,C,D) の区別
年平均降水量が乾燥限界を上回る場所は湿潤気候となる(樹木が育つ)。
最寒月・最暖月平均気温を基準にして以下のように区分する。

A(熱帯) : 最寒月が18℃以上(ヤシが生育できる)。 
C(温帯) : 最寒月が-3℃以上18℃未満 かつ 最暖月が10℃以上(冬季の積雪は根雪にならないが、ヤシが生育するほどでもない)。 
D(冷帯) : 最寒月が-3℃未満 かつ 最暖月が10℃以上(冬季の積雪は根雪になるが、樹木は生育できる)。 
A、C、Dの分類記号は以下のようになるが、A(熱帯)を分類する場合と、C(温帯)、D(冷帯)を分類する場合では分類方法が異なる。

f : feucht(湿潤) 
m : Mittelform(中間) 
w : wintertrocken(冬に乾燥) 
s : sommertrocken(夏に乾燥) 

熱帯 (A) の区別
最寒月平均気温が18℃以上ある(ヤシが生育できる)熱帯は、降水パターンによって次の3つに区分される。

Af(熱帯雨林気候) : 最少雨月降水量が60mm以上。 
Am(熱帯モンスーン気候) : 最少雨月降水量が60mm未満 かつ (100-0.04×年平均降水量)mm以上。近年の高校地理教科書では熱帯雨林気候と区別しない、もしくは「やや乾季がある熱帯雨林気候」として掲載する場合がある。 
Aw(サバナ気候) : 最少雨月降水量が60mm未満 かつ (100-0.04×年平均降水量)mm未満。 
※Awの条件を満たし上記の降水パターンの区別でsの場合はAsとなるが、ハワイ州の一部等ごく限られた地域にしか存在しない。Asは元来熱帯夏季少雨気候とでも呼ぶべき気候であるが、サバナ気候に含めるのが普通である。


温帯 (C) と冷帯 (D) の区別
上記の降水パターンの区別によって、f、w、sのいずれかに区別される。


温帯 (C) の細分化
C(温帯)に関しては最暖月平均気温によってさらに細分化される。

a : 最暖月が22℃以上。 
b : 最暖月が10℃以上22℃未満 かつ 月平均気温10℃以上の月が4ヶ月以上。 
c : 最暖月が10℃以上22℃未満 かつ 月平均気温10℃以上の月が3ヶ月以下。 
※Cwc,Cscはごく限られた地域のみに点在する。


冷帯 (D) の細分化
D(冷帯)に関しても最寒月・最暖月平均気温によってさらに細分化される。

a : 最暖月が22℃以上。 
b : 最暖月が10℃以上22℃未満 かつ 月平均気温10℃以上の月が4ヶ月以上。 
c : 最暖月が10℃以上22℃未満 かつ 月平均気温10℃以上の月が3ヶ月以下 かつ 最寒月が-38℃以上-3℃未満。 
d : 最暖月が10℃以上22℃未満 かつ 月平均気温10℃以上の月が3ヶ月以下 かつ 最寒月が-38℃未満。 


2.生物 
(1)生物地理区・ウォレス線・分布境界線
オーストラリアは、デンドロビウムキンギアナムや、いわゆる大明セッコクの産地として知られているように、東南アジアからオセアニアは洋ランの一大産地です。
ところで、ダーウィンより早く進化論を提唱したと言われているウォレスは、この境の地域の動物の分布を調べていて、多くの種類が同じ所を境に異なっていることに気づき、1868年にその境界を示しました。それがウォレス線です。
後に植物で調べたメリルは1923年にこれらの延長を提案し、後に新ウォレス線となりました。
現在では、動物と植物を総合して、生物地理区という考え方やその地図ができています。
洋ランが主に分布しているのは、東洋区(東南アジア・インド)、オーストラリア区(オーストラリア・ニューギニア)、新熱帯区(南米から中米)、でこの他に、旧北区(温帯アジア以北・ヨーロッパ)、新北区(北米の、メキシコ高地以北)、エチオピア区(地中海沿岸を除くアフリカ・マダガスカル)にもあります。
境界付近に自生している種類の分布を考えるのは面白い。

生物地理区に色分けした地図


ウォレス線(赤線)左上が東洋区、右下がオーストラリア区
スンダ列島のバリ島とロンボク島の間を通り、ボルネオ島、セレベス島の間を経て、ミンダナオ島の南へ抜ける。
新ウォレス線
ミンダナオ島の南へ抜ける線を延長し、パラワン島以外のフィリピンの西を通り、バシー海峡で東へおれる線。
その後、台湾南部に位置する紅島礁と台湾の間へこの線を延長する説もある。


(2)CAM植物
植物は光合成して生長する。光合成には、原料である炭酸ガスと水、そしてエネルギとして日光が用いられる。
普通の植物は日の照っている昼間に気孔を開いて炭酸ガスを吸収し、光合成を行う。
乾燥地帯に生える多肉植物は、昼気孔を開けると水が蒸散してしまうため、気孔を閉じたままで光合成を行う。
そのために、夜、温度が低くて水の蒸散の抑えられる時に、
気孔を開いて炭酸ガスを取り込み、液胞という細胞に、リンゴ酸の形で水に溶かして蓄えておき、
昼には、炭酸ガスに戻すという、効率の悪いことをしている。
このような植物の仲間のベンケイソウは、朝噛んで見ると酸っぱかった、これはリンゴ酸のせいである。
そこでこのような植物を、Crassulu Acid Metabolism、略してCAM植物と呼ぶようになった。
いわゆる多肉植物やサボテンの他にも、パイナップルなどもCAM植物である。
ランの仲間では、熱帯産の着生のランは大体(デンドロビウム、コチョウラン・カトレヤ・バンダなど)CAM植物であり、
一方温帯産の地生蘭(シンビジウムやパフィオペディルム(熱帯産の例外あり))は普通の植物と同じ光合成をする。
2008.11.12

2008.11.11- 開設


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